“赤字状態”の地球環境

「地球環境は今、赤字状態にある」
こう聞くと、驚かれる方もいるかもしれません。しかしそれは、厳然たる事実です。

その証拠となるのが『アース・オーバーシュート・デー』。これは、「人間による自然資源の消費量が、地球環境が持つ一年分の再生産量を超えた日」を意味します。

アース・オーバーシュート・デーは、グローバル・フットプリント・ネットワークという団体が毎年発表しているもので、以下のサイトからも確認できます。
http://www.footprintnetwork.org/en/index.php/GFN/page/earth_overshoot_day/

データによれば、2014年は819日、2013年は820日、2012年は823日と、年々短くなっているのが分かります。2000年は101日でしたから、たった15年たらずの間に、資源の消費が急速に早まっているのです。

この状況がこのまま進んでいくと、自分の子供や孫の世代に大きな影響が生じるのでは……とちょっと不安になりました。

一方で、3R(リデュース・リユース・リサイクル)やゴミの分別、エコ商品の購入など、個人単位で行える環境への取り組みもなされています。

しかし、どれほど浸透しているかという点も含め、より大きなインパクトを与えるためには、やはり企業が取り組むべき課題だとも感じました。

そこで今回は、812日~15日にスウェーデンのストックホルムを訪れた際に学んだ“サスティナビリティ(持続可能性)”についてご紹介いたしましょう。

(※サスティナビリティとは、地球環境やエネルギーが将来にわたって持続できるかどうかを表す概念のことです。)

ストックホルムの水道水は美味しい!?

私たちは、ストックホルムの中心にある「Scandic Park」というホテルに宿泊しました。近くには公園があり、隣にはコンビニエンスストアもあります。その見慣れた姿にホッとしました。

日本でも海外でも、私はホテルに宿泊するときには必ず、ペットボトルの水を1晩につき1リットル買ってからチェックインします。ここでもまず始めに、コンビニでペットボトルの水を購入し、3泊のあいだいつでも安全な水が飲めることに安心しました。

しかし翌日、ホテルの朝食ブッフェでも、美味しい水や炭酸水が提供されていることに気付きます。しかも、日本の一般的なレストランで出される水よりはるかにおいしいのです。

さらに、スウェーデン人の同僚の話によると、なんと、朝食やレストランで提供される水や炭酸水も元は水道水だということです。てっきり、ミネラルウォーターと思っていた私は本当にびっくりしてしまいました。

ふと冷静になり「お腹壊さないよね?」と確認してしまいましたが、聞くところによると、ミネラルウォーターよりもミネラルが多く、水質も良いとのこと。

ストックホルムで買ったペットボトルの水は、結局ムダになってしまいました。私の行為は砂漠で砂を買うようなものだったのです。

『お好きなだけ食べてください。でも、残さないでください』

このホテルでは他にも、日本では見かけない光景がいくつかありました。その中でも驚いたのは、食卓にフルーツ丸ごと、大きなパンを丸ごと、チーズも大きな塊で置いてあるということです。

いわゆる「ブッフェ形式」の食事ですね。脇には、まな板と包丁があります。……つまり、自分で好きなサイズに切るのです。

最初は「人件費の削減かな……」と思い、ホテルの人に聞いてみたところ、食品の廃棄量を減らすためだと教えてくれました。

スウェーデン語で書かれていたので分からなかったのですが、ブッフェを提供するテーブルには、次のような文章がありました。

『お好きなだけ食べてください。でも残さないで下さい。』

加えて、他のホテルよりもお皿も小さいものを提供するという工夫もされているそうです。これらはすべて、廃棄物削減のためだとのこと。

私は、祖母から米粒1つも残さないように食べなさいと言われて育ちました。そのため、いまだに食べ物を残すことに罪悪感があり、つい海外にいると太ってしまいます。しかし今回は、自分の適量だけ食べられたので、健康体を維持することができたのです。

ホテルの「サスティナビリティ戦略」とは

ここで改めて、Scandicホテルが実施しているサスティナビリティの取り組みについてまとめてみましょう。これらはすべて「サービスを低下させずにいかにコスト削減を行うか」が出発点となっています。

1.ホテルでつくる炭酸水

まず1つ目が、「水の問題」です。これまでにも提供している水は水道水だったそうですが、炭酸水についても、ホテルで作れるようにしたのです。

水道水から作れますので、炭酸水を買うコストも削減できますが、なによりも輸送に関わるCO2の削減に対し、良い影響を与えたそうです。

2.徹底した廃棄物の削減

2つ目が、自分で好きなサイズに切り出す「朝食ブッフェ」の提供方法です。これは、従業員の方が考案した施策だとのこと。

キッチンの裏側も見せて頂きましたが、朝食から出た廃棄物は1つのバケツに入れられ、その重さを毎日体重計で測り、記録しているそうです。しかもその廃棄物は、ほとんどすべて(99%)バイオガス燃料として使われているそうです。

改善の方法を常に現場の人たちが出し、自ら取り組んでいるのは素晴らしいですね。

3.「環境配慮」という広告塔

そして3つ目が、環境への取り組みが「広告塔」になっているということです。

上記のような施策は、他のホテルよりも先行して行っているため、新聞やメディアに良く取り上げられるそうなのです。つまり、広告費がほとんどかからない宣伝なのですね。

また、環境への取り組みの結果、企業側からも支持され、ビジネスのお客様が増えたといいます。

これらの施策は、ほんの一部にすぎません。実際には、上記の3つ以外にも、サプライチェーンを巻き込んだ大きな取り組みまでなされているそうです。

企業・顧客・環境の“三方良し”へ

Scandicホテルがサスティナビリティ戦略を始めたのは、1990年代の欧州危機の頃だそうです。経営のサスティナビリティを考えた時、顧客にも愛され、経済的にもメリットがあるように環境のサスティナビリティを戦略として取り入れる意思決定をしたのです。

ただ地球環境に良いことをして満足するのではなく、これを経営戦略の中心に据えて、柔軟に現場のアイディアを取り入れながら企業運営すること。ポイントはその点にあります。その結果、現在は北欧で1番大きなホテルチェーンになりました。

企業がサスティナビリティを経営の中心に据え、戦略的に、リーディングエッジに取り組むことで得られるメリット。それこそが、経営のサスティナビリティの原動力になるかもしれませんね。

環境への配慮は“お金がかかる余計なこと”といった捉え方ではなく、今後、“企業が生き残っていくための戦略”に他なりません。現状に対して先手を打っていくことで、企業にとっても、顧客にとっても、環境にとっても良い事業にすることが出来る。そのことを、ひと夏の経験が教えてくれました。

「企業が生き残っていくための戦略」であるサスティナビリティへの取り組みについてより詳しく知りたいという方は、ぜひ下記のeBookをダウンロードしてください。スウェーデン出身、サスティナビリティの理論化であり実践家として世界的に著名なカール=ヘンリック・ロベール博士らの考え方などを分かりやすくご案内しています。





サステナビリティとイノベーション 〜次世代への責任〜




廣瀬 沙織
東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。 株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。