皆さんの会社ではどのような「経営指標」を活用されていますか?

好業績企業の特徴として、エンゲージメントの高さが挙げられます。エンゲージメントとは、会社が目指す方向と個々人が貢献したいことが一致し、満足している状態を指します。エンゲージメントが高くなると、社員の定着率が良くなります。採用コストが低減する、教育効果が高まり、様々なアイデアが社員から出てくる、サービス品質が向上する、改善や改革が進むなどと言われています。社員のエンゲージメントを定期的に調査し、経営指標として活用する組織も増えています。

株式会社ビジネスコンサルタントでは、企業で働く約30,000名を対象としたアンケートを実施・分析しました。その結果、定着率の向上に影響の大きい項目が明らかになり、「良く聞く退職理由」とは異なる結果が出てきました。分析結果から、人が辞めない、定着率向上につながるマネジメントについて考察します

※本レポートの全文「3万人のアンケートから見えた!人が辞めないマネジメントとは」は、こちらよりダウンロードいただけます。

定着率向上のカギは「職場を変革する力」「管理職からの励まし、声掛け」「成長感」「管理者のリーダーシップ行動」

今回のアンケート調査は、主に職場の活性度やマネジメントの効果性を測るための診断モデル(質問数35個)を使用しています。この診断モデルに「今後も当社で働きたい」という質問を追加して、定着率向上と各質問との相関を調べました。

「今後も当社で働きたい」と思える理由トップ5

「自部門の変革能力」 (0.586)
「管理者の承認や励まし」 (0.562)
「部門運営計画の実践と進捗確認の効果性」 (0.549)
「仕事を通じた成長の機会」(0.541)
「部門の進歩へのマネジメントの貢献」  (0.530)

(※カッコ内は相関係数です。相関係数は0.5以上で有意な相関があると考えられます)

この結果からは4つのキーワードが浮かび上がってきました。

キーワード①【職場を変革する力】

「今後も当社で働きたい」と思える理由の1位は、「自部門の変革能力」です。この質問は、回答者に「自分たちの力で自部門を変革できる」という認識があるかどうかを確認するものです。他者の指示で動くのではなく、自ら主体的に問題を発見・解決し、変革につなげていくことができ、その結果として自信や自尊心を高められる職場環境であることが重要です。

キーワード②【管理者からの励まし、声掛け】

「管理者の承認や励まし」や「部門運営計画の実践と進捗確認の効果性」は日常の職場運営のあり方の重要性を示唆しています。日々の仕事の成果に対して、直接的かつタイムリーに、承認、励まし、ねぎらをすることが必要です。また、計画の精度を高め、期初に立てた計画が適切か、その計画に基づいて日常の実践や進捗確認が適切に行うことも必要です。

キーワード③【成長感】

「仕事を通じた成長の機会」は、現在の仕事において成長感が味わえるような機会があるかを確認する質問です。メンバーが成長感を持てるような目標設定になっていて、きめ細かいフィードバックがあるといったことが重要です。

キーワード④【管理者のリーダーシップ行動】

「部門の進歩へのマネジメントの貢献」は管理者のリーダーシップ行動に関連する項目です。

管理者が部門の目的・目標達成にこだわって率先垂範の姿勢を示し、結果を出せていることをメンバーは期待(評価)しています。さらに現状満足せずに先々を見ながら部門のイノベーションや成長の施策を展開することも重要といえます。

「上司との関係」や「職場の人間関係」は、定着率との相関はみられない

「今後も当社で働きたい」かどうかと、関連性の低い質問

援助関係づくり(0.440)
上司の部下支持(0.389)
葛藤処理(0.387)
上司との関係(0.363)
効果的な人間関係(0.351)
職場の信頼関係(0.219)
仕事に対する変化(0.158)

従来から退職理由としてよくあげられる「上司との関係」や「職場の信頼関係」は、今回の調査では定着率との関連が低いことが分かりました。相関係数は0.4未満で、これは統計的には相関は見られないことを意味しています。上司との関係や職場の人間関係といったことは、離職時に理由としやすいから挙げられているだけではないかと推測されます。

まとめ:人が辞めないマネジメントのポイントとは

これらのことから、職場のエンゲージメント向上につなげるため、マネジャーは次のようなことに意識的に取り組むべきと言えそうです。

①結果・成果にコミットし、自ら動くこと。ただし独りよがりにならず、メンバーを効果的にサポートして影響力を発揮する。

メンバーは、上司が結果を出しているかに強い関心を寄せると同時に、自分の貢献もあって職場全体が目標達成をできたと実感できた時、高い満足感を得ます。

②ポジティブ・ネガティブの比率を意識してコミュニケーションを取る

生産性の高い職場においてはポジティブな言葉を使ったコミュニケーションとネガティブな言葉を使ったコミュニケーションの比率が3~5対1の割合であるという調査結果があります。

③意図的かつタイムリーにPDCAサイクルを回す

変動要素も踏まえて計画の精度を高めること、そして状況変化に基づき計画を見直す柔軟さや創発が重要です。

④部下の成長感をうながす関わり方を工夫する

「1 on 1」と言われる、上司と部下の1対1の面談を頻繁に実施することを推奨している組織が増えています。部下の成長をサポートするための議論ではない、対話の場を設けましょう。

弊社では、組織の理想像を「自律・創発・協働型組織(自己革新組織)」と考えています。自らの力で主体的に変革ができ(自律)、変革の途中段階でも現場状況に合わせて計画を微修正しながら(創発)、働く人々が相乗効果を出して(協働)、成果を出せるような組織です。今回の調査結果は、この自己革新型組織が重要であることを示唆しています。本レポートが魅力ある職場作りのヒントになりましたら幸いです。




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参考文献
バーバラ・フレドリクソン(2010)『ポジティブな人だけがうまくいく31の法則』日本実業出版社


調査に使用したモデル(組織活性度診断)

・組織の活性度やマネジメントのクオリティを測定することを目的とした診断モデル(7分野×5項目、全35項目の設問からなる)
設問の分野:目的、構造、リーダーシップ、関係、報酬、援助的メカニズム、変化への対応
・回答の選択肢は「1.そうとは思わない」~「7.その通りだと思う」の7段階、質問紙(マークシート)またはWEB入力で回答

調査概要

1.対象人数と年齢層 29,774人、20代~50
2.調査期間 20161月~8
3.調査方法 WEB及び質問紙
4.業種 通信機器販売、土木業、生活用品・化粧品製造販売、住宅用資材製造販売、人材派遣、医療・福祉、
5.職種 営業、医療事務、介護スタッフ、保育士、対面販売 など


 

笠井 崇
1988年入社。現在、テクニカル・ディレクターとしてコンテンツ開発、マテリアル開発の責任者を兼務。コンサルタントとしての専門領域は経営人材育成研修(社内ビジネススクール)、事業戦略、ビジネスモデルイノベーションに関する研修講師、サステナブル戦略、バックキャスティング経営に関する研修やコンサルテーションを担当。2015年国際NGO団体 The Natural Stepの認定トレーナーを取得。