うなぎはどこから来たのか?

先日、同窓会で高知に行った際、足を伸ばして四万十川まで行きました。美しい川の水、名所である沈下橋などを観光し、天然うなぎを食す。これまでに食べたうなぎの中でも指折りの美味しさに舌鼓を打ちました。ただ、帰ってきてからふと疑問に思ったのです。

「養殖うなぎの稚魚は、どこから輸入しているのだろう?」

水産庁のデータ(平成24年12月~平成25 年5月)によると、シラスウナギの主な輸入先はもともと香港が多かったとのこと。しかし近年では不漁が続き、東アジア以外から輸入する動きが活発化しているようです。平成24年時においては、これまでほとんど実績のなかったフィリピン・アメリカ・マダガスカルなどからも輸入している状況です。

“天敵”の存在が生存率を高める!?

うなぎの稚魚について調べているとき、同僚から面白い話を聞きました。

「うなぎを輸入する時、彼らの生存率を上げるために、天敵であるナマズを使うらしいですよ」。

通常、うなぎの稚魚を水槽にいれて運ぶと、揺られるストレスのせいか、その多くが死んでしまうそうです。しかし、天敵であるナマズを入れておくと、輸送時の揺れよりももっと強いストレスである「命に対する危機感」が勝り、生存率が上がるらしいのです。(※この話の真偽は科学的に証明されておりません)

さらに、同僚は次のように続けました。

「人間も同じで、天敵のような強い【プレッシャー】が、生命力を上げるには効果的ですよね」。

たしかに、ある工場が火事になったとき、全社員が普段以上のちからを発揮して対処した事例がありました。またアスリートが、適度なプレッシャーによって本番での実力を高めるという話も聞いたことがあります。

うなぎの天敵がもたらした2つの教訓

「うなぎの天敵」の話からは、次の2つの教訓が得られます。

1.「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」

1つ目は「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」についてです。ある研修で、企業の幹部の方がこんな話をされていました。

人の心に火をつけるには次の4つが必要です。

1.「赤字」
2.「競争」
3.「アメとムチ」
4.「自己実現」

自己実現は「内発的動機づけ」、そしてその他の3つは「外発的動機づけ」ですね。うなぎの水槽に天敵を入れる行為は、まさに「外発的動機づけ」です。ただし、人を動かすためには、自己実現という「内発的動機づけ」にも注意を払わなければなりません。私たちはうなぎほど単純ではないのですから。

2.多様性を含む自然

2つ目は「多様性」についてです。ある勉強会でうなぎの天敵の話をしたら、次のような意見をいただきました。

「それは、競争というプレッシャーが生命力を上げたとも解釈できますが、【多様性がうなぎの稚魚全体の生命力をあげた】ともとれますね」。

天敵の投入は、水槽という環境を自然な生態系に近づけたのかもしれません。うなぎの稚魚たちにとって天敵の存在はプレッシャーですが、一方で、生態系としては自然なかたちです。そのことが、水槽全体の持続可能性を高めたとも考えられるのです。

ダイバーシティ(多様性)と自己実現

最近では、企業経営のテーマとして「ダイバーシティ(多様性)の推進」をかかげる経営者が増えています。うなぎの例からも分かるとおり、ダイバーシティを推進することは組織全体の持続可能性を向上させることにつながります。ただし、その際には、外発的動機づけによって危機感をあおるだけでなく、自己実現という内発的動機づけを誘発することも欠かせません。

つまり、持続する組織には“多様性”が必要であり、それぞれが競争というプレッシャーと闘いながら“自己実現”できる環境が求められているのです。

大切なのは、天敵が存在する環境を忌避してしまうのではなく、個々人がダイバーシティの中で競争そのものを楽しむことでしょう。もちろん、“食べられてしまわない”ように注意しながら。

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