2018年569日にアメリカのサンディエゴで開催されたAssociation of Talent DevelopmentATD)のInternational Conference and ExpositionICE)に参加し、学んできた内容をお伝えします。

ATD ICEとは世界中の人材開発の専門家や、人材開発に関連するツールを提供している企業が集まり、お互いに新しいアイディアや成功事例などを紹介し、学びあう集まりです。

ATDは75周年、参加者は93か国13,000人!

 ATDは今年75周年という節目を迎えました。私はこの7年ほど参加していますが、今回は特別な会だったと感じています。例えば、例年参加者は1万人程度ですが、今回は3,000人増えて13千人もの方々が世界中から参加していました。私たち㈱ビジネスコンサルタントからは43名が参加したのですが、日本からの参加者数は全体で100名程度増えており269名でした。ATD2018参加人数

 参加者が増えた理由はいくつかあると思いますが、1つは会場がサンディエゴというカリフォルニア州の人気の街であったことが挙げられます。海軍の街としても有名で、ATDのネットワーキングイベントはミッドウェイという巨大な戦艦で開催され、その迫力に圧倒されました。また、参加者が増えた最大の理由は、バラク・オバマ前大統領の講演が開催されたことだと思います

ATD_2018_会場

大勢の人が集まる基調講演会場

さすがオバマ前大統領、講演には1万人収容できる会場が用意されていました。講演は朝8:30からでしたが、5:30には行列ができはじめたようで、私たちが会場に到着した630には長蛇の列ができていました。結局1時間くらい並んで、ようやく会場に入ることができました。

オバマ前大統領が登壇すると、一言も話していないのにスタンディングオーベーションが止まらず、その人気ぶりが伺えました。今回は、オバマ前大統領の話から受け取ったメッセージをお伝えしたいと思います。

オバマ前大統領からのメッセージ

ATDオバマ元大統領

話している様子はスクリーン越しに見る

一般的な基調講演とは異なり、事前に作りこまれたスピーチをするのではなく、ATDCEOであるトニー・ビンガム氏からの質問に答える形で、対話が進められました。

1つ1つの質問に真摯に、自身の経験をもとにお話されていた様子がとても印象的でした。特に、貧しい家の生まれでありがなら大統領になれたのは「教育」の賜物であり、「教育」が人間の成長や、成功をつかむ上でどれほど大切であるかをお話されていた時は、人材開発をしている私としては「本当にその通り!」と声を上げそうになる瞬間でした。

 私が受け取ったメッセージは次の3つです。

 レジリエンスを高めるには

質問:困難な状況にあっても、それを乗り越えていく力としてレジリエンス力が注目されて久しいですが、その能力を培うためにはどうしたら良いでしょうか。

オバマ前大統領:「どんなタイトル(肩書・称号)になりたいのか」ではなく「何を成し遂げたいのか」を考え行動することで自然とレジリエトになる。「大統領になりたい」で大統領になっても仕方がない。成し遂げたいことがあって、そのためにしなければならないことに対して、人は努力して乗り越えることができる。

 「Value(価値)を生きる」という言い方もされていましたが、まずは自分の中に軸をもって、仕事もプライベートも生きていく重要性がメッセージされました。

 大統領に必要な意思決定は、関係性がもたらす

質問:オバマ前大統領は若くして大統領になられたのですが、どのようにして大統領に必要な意思決定力を磨いたのですか?

オバマ前大統領:大統領に「最善」の意思決定は難しいが、大事なのは「Fact」を集めることだ。関係者に問いかけ、その人が見ている事実を知り、意思決定につなげるために、オープンマインドで人と関係を作っていく。通常、大統領が話をする高官だけでなく、その周りにいる情報を持っている人たちにも声をかけ、何が「Fact」なのかを把握する努力をしていた。そのためには、様々な人を巻き込みむようなインクルージョンが大切だ。

 Fact」が大事だというメッセージは、現大統領のトランプ氏の「Fake」を彷彿させるものであり、「Fact」と発言するたびに会場は笑いの渦に包まれていました。

 未来に対してどういった態度で臨むのか

質問:変化に恐れを感じる人もいますが、どのような態度でそれに臨めばよいのでしょうか。

オバマ前大統領:私は基本的には「楽観主義」だが、条件付きの楽観主義で、「慎重な楽観主義(Cautiously Optimistic)」だと思っている。デジタルの進化や、地球環境の変化など今までにないスピードで世の中は変化している。こういったことは経験したことがなく、恐ろしく感じることもある。しかし皆が「世の中をよくしていきたい」と考え行動している限り、良くなるのは必然のことと考えている。変化は一夜にして急激に起こるものではない。だから我慢強さが大切で、ちいさな変化でもできたところに目をむけ、前進していくことがリーダーには求められる。

 「未来は良くなるのが必然」というオバマ前大統領のメッセージにはとても勇気づけられました。

全体を通して、オバマ前大統領の人となりが感じられるお話しでした。また人材育成やリーダーシップの観点でも気づかされることが多くありました。特に人を大切にし、巻き込むことが意思決定力につながったり、自分の価値や軸を大事にすることでレジリエントになれるといったメッセージは、私自身の行動やあり方を振り返る切っ掛けとなりました。

次回もATD ICE 2018で学んだことをお伝えします。
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廣瀬 沙織

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修士課程修了/ 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 理事。

株式会社ビジネスコンサルタントにて営業マネジャー職を担当。その後、同社における顧客組織の組織開発と人材開発への投資効果と投資効率を最大限に高めるための会員制サービスの商品戦略を担当。現在は同社の研究開発マネジャーとして、サステナブル社会の実現のため、ポジティブ心理学やイノベーション理論、自然科学ベースの戦略策定フレームワークに基づく商品開発およびその実践を担当。