この記事はこのような方々にお届けしたいと願っています。

・ご自身が所属する組織の運営を今より良くしたいと思っている
・会社の成長戦略に向けて、社内の様々な部門や人々から多様な意見や知恵を集めたいと考えている
・いわゆる研修や知識学習で学んだあと、行動に踏み出せないと感じている
・どうにかしたい課題があるのに、どこにも突破口がないと立ちすくんでいる

複雑で、変化の早い時代。その課題解決のやり方、本当にあっていますか?

組織の中で今何が起きていますか?あなたはそれについてどう感じていますか?

・手順の決まった業務を遂行して安定と安心感を覚える
・煩雑で専門性の高い仕事にやりがいを感じている、必要とされていると感じる
・日々新しいアイデアのトライ&エラーを繰り返していてワクワクする
・予想不可能なトラブルが焼夷弾のように降ってきて疲れ切っている、お先真っ暗

さまざまな状況にある人たち

同じ組織の中でも答えは十人十色、置かれている立場やその方の見方によって様々な声があるでしょう。異なる価値観や世界観を持つメンバーで組織されている時点で組織は十分に多様です。

では、今あなたの組織が何か課題を抱えて変化を必要としているとします。
どうすれば良いでしょうか?

強くて賢明なリーダーの指示や命令に従うでしょうか?課題解決手法のトレーニングに社員を参加させるでしょうか?これらはもちろん十分に効果的なアプローチであり、過去に成功をおさめてきたやり方かもしれません。

しかし現在、組織を取り巻く環境は複雑で思いもよらない速さで変化しています。過去の技術や経験のアプローチが通用しなくなってきていることに多くの方が気づいているのではないでしょうか。多様なメンバーに加え外部の利害関係者を抱える組織はどのように課題と向き合っていけば良いのでしょうか?

解決策に飛びつく前に、問うべきこと

組織のなかや外のさまざまな利害関係者に関わる複雑な問題に向き合ったとき、最短距離で効果的な解決策を講じたいと願うのは当然のことです。「居心地の悪い場所」や「暗闇のなか」から早々に脱出して安心したいですし、様々な制約条件の中でビジネスパーソンは「はやく結果を出すこと」が求められるからです。

知っている解決策でうまく行く状況にいるなら、速攻その解決策を実行しましょう。しかしその解決策がうまく行かない時、または解決策が見えないとき、わたしたちは立ち止まって、自分にこのように問いかけることができます。

「そもそも”問題”とされていることは本当に問題なのか?」
「その課題設定は妥当なのか」
「今の状況をわたしたちはどう見ているのか」
「認識は共有しているのか/認識が違うという事を認識しているのか」

置かれている状況に対する認識を集めたり、それってどういう事なの?と話したり聞いたりしながら、課題を捉えなおす話し合いから始めることが必要になります。

対話は、組織を賢くする

この話し合いを始めようと思ったら何はともあれ、まずさまざまな相手と一緒にいて、つながり続けて、互いの声を聴き、共にはたらく必要があります。立場が違う、部署が違う、意見が違う、この場にふさわしい/ふさわしくない、など様々な分断が組織の風通しを悪くして組織としての能力を低めてしまうことは感覚的にもご理解して頂けるでしょう。(いやいや分断は必要だ!という声があれば好奇心をもって耳を傾けたいと思うのでぜひとも筆者までご一報を!)

ヒトが怪我したり、体調を崩したりしたとき、全身の臓器や血液や神経が総動員で事に当たるのと同様に、組織を構成する人々がつながって、組織のあらゆるところから知恵や力を集めて課題に対処し、変化を生み出して、新しい道を見つけたり、新たな意味を見いだす必要があります。

ご提案したいことはシンプルです。私たちは、違う人々、つまり多様な人生、多様な経験やストーリーをもった人たちと共にいて意識的に対話するための練習が必要である、ということです。そうすれば自分たちの置かれた状況について意味を見いだし、直面している問題についての解決策を育むために協働することができます。

誤解を恐れずに言い切るとすれば、同僚と仲良くしたり、自由に話して聞いて、リフレッシュすることだけが対話のすべてではありません(そういう場ももちろん時には必要ですが)。組織が新しい知恵を見いだし、組織自体が賢くなり、変化に向けて行動を起こすために対話の場は設けられるのです。

私たちにとって大切な話し合いを、実り豊かにするためのアートとは

組織を賢くするための対話とはどういうものでしょうか?知恵を集めたり変化を生み出すための意識的な話し合いは、どうしたらよいのでしょうか?

幸いなことに、私たちの祖先が火を囲み輪になって座っていた時代から何世代もの先人が経験したことの知恵をまとめたアプローチがあります。Art of Hosting&Harvesting アート・オブ・ホスティング&ハーベスティング(私たちにとって大切な話し合いをホストしハーベストするためのアート)と呼ばれるものです。アート・オブ・ホスティング&ハーベスティングとは、参加者と共にホストやハーベストの役割がうまく機能する「場」作りのスキル、考え方、この場づくりが必要な世界観などを実践の中から抽出したものです。ここで使われているアートの意味は芸術というよりはむしろ、例えば茶道のように「~~道」という意味です。これができたら完成・終わりではなく、継続的に練習し探求を続けるという意図を含んでいます。
現在世界にはアート・オブ・ホスティング&ハーベスティングの実践を探求する人は1万人以上いて、日本の組織や地方自治体の中でホストやハーベスターのスキルを提供する実践者がここ数年徐々に増えてきました。

ここから先は、アート・オブ・ホスティング&ハーベスティングに基づく実践をご紹介します。過去のイベントや集まりと照らし合わせながら、あるいは先々に予定している集まりに使えそうな要素はないか、想像しながら読み進めてくださると幸いです。

話し合いを構成する3つの要素

目的と人びと

アート・オブ・ホスティング&ハーベスティングで大切にされている、話し合いの主な要素は3つです。それは、「ニーズに基づく目的」と「スペース」と「ひと(参加者・ハーベスター・ホスト)」です。

ニーズに基づく目的

何のために集うのか、という目的です。「自社の新たな提供価値を定義して顧客と感動を分かち合いたい」「気持ちよく働く職場で皆が笑顔でいたい」「5年後にスター商品になるかもしれないアイデアが次々と生まれる風土にしたい」などなど。
目的は”見えざるリーダー”として話し合いの方向性を指し示し続けます。

スペース

人々が安心して快適に話し合いに集中できるように、またその場から変化や知恵が生まれる可能性が十分にひらかれるように丁寧にしつらえられた空間です。多くの場合ほっと一息つくことができるようなお茶コーナー、休憩や少人数での話ができる余白のある会場づくりをします。

ひと、はさらに3つに分けられます。

ひと①:参加者

目的から呼びかけられた人、自分はそのテーマに関係があると動かされた人など、その場に足を運んで対話に参加する人。

ひと②:ハーベスター

話し合いの内容を記録したり、そこで得られた解決策や知恵を後に活用できるように絵や写真、記事や動画、体験を有形無形に残すことを専ら行うために場にいる人。

ひと③:ホスト

対話の集いを企画し運営する人。参加者や場の可能性が十分にひらかれるよう場を支える役割をとります。

スペースと参加者とホストとハーベスターがそれぞれの役割を大いに発揮した場が立ち上がるとき、話し合いは実りあるものとなります。


次のブログでは恐らく多くの方が初めてきくかもしれない「ホスト」と「ハーベスター」のはたらきを紹介しながら、どのように話し合いが始まって終わるかをご紹介します。

新規CTA